☆囲炉裏
昨日は箱膳が話題になりました。箱膳と言えば、「囲炉裏」ですね。
僕が幼少の頃は囲炉裏が二ヶ所切られていました。
一ヶ所は「にわ」と言って、この地方特有の呼び方ですが、玄関を入ってすぐの板張りの間です。
主に農作業をする所です。
収穫期には、野外で乾燥した稲をいっぱい積み込んだり、冬季は俵編み、わら細工をしたりしていた部屋です。
この間の囲炉裏は常に薪を焚いて暖を取ったり、煮炊きをして食事をしていました。
板張りで囲炉裏の回りだけゴザやムシロを敷いてありました。
この間はすべて取り壊して改築しましたので残念ながら昔の面影はありません。
もう一ヶ所は茶の間です。この間の囲炉裏は余程でない限りは直接火は焚きません。
火種は炭でした。冬季は囲炉裏の上に「コタツやぐら」を置いて炬燵にもなりました。
居間として使ったり、ちょっとしたお客さんは此処に通しました。
牧之庵の茶の間は、現在は客間として使っています。
内部は20年ほど前に改造しましたが、囲炉裏は当時のままの位置に残っています。
使っていた囲炉裏道具はそのまま当時の物です。
囲炉裏は座る場所が決められていました。
手前が「横座(よこざ)」と呼ばれ、家長(亭主)の座る場所、左が「かか座」で妻の場所、右が「客座」でお客さんの席、奥が「木尻」と呼ばれ自由席です。
地方によって、様々な呼び名があるようですが、呼び名はどうであれ、座る場所は決まられていたようです。
「横座」とは、畳が横に敷かれていたことから、その名が付けられた様です。
どんなお偉いさんが来ても亭主は「横座」に座ります。
「かか座」も指定席があり、この場所でお客さんのおもてなしや、家族のご飯をよそったりしました。
言わば、台所に近いこともあったのかも知れません。
「木尻」とは、薪等の燃料を置く場所も指しますが、「向座」とか「焚き座」とも言われます。
家族の人数によって、適当に座りますが、お客様のいない時は「客座」に長男が座ることが多かったようです。
あとは、座と座の間に適当に座ります。
囲炉裏には、中に上に縁にと、七つ道具が備えられています。
中には、まず持って「灰」がいっぱい入っています。
燃やした材料の燃えカスですが、火種にかけて火力の調整をしたり、魚や食物を焼く時の串の支えにもなります。
鉄瓶や鍋等を置く「五徳」、薪や炭などを掴む「火箸」、餅やおやき、魚などを焼く「渡し」、この他に「炭壺、ジュウナ、灰ならし」等があります。
頭上には、「火棚」と呼ばれる木枠が吊り下げられ、薪を乾かしたり、濡れた衣服を乾燥したり、保存食をぶら下げたりします。
火棚の真ん中から「自在かぎ」が吊してあり、煮炊きする鍋や鉄瓶などをぶら下げます。文字通り上下に自在に調整して火力調節をします。
囲炉裏の縁は「いろり縁」と呼ばれる木製の木枠が四角形に額縁が設けられています。
幅広の縁は、ちょっとした小物置きの小テーブルにもなります。
お茶やお猪口の置き台代わりです。
他に備え品として、「鉄瓶、火吹き竹、点け木、炭入れ、鍋敷き、鳩徳利、燗鍋、木尻」等があります。
囲炉裏文化は、切っても切れない人類の文化、形は違っても炉から始まる。
特に農村では「ろばた会議」と言われ、疎通の場として活躍してきた。
家族の「団欒の場」であり続けて来た。
この時を経て、なお人は(日本人)は和文化(囲炉裏)に愛着を憶え、郷愁と癒しを求める。