2日の閉店後に法曹の道に進もうと、一貫して頑張っている知人が遊びに来た。
僕の子供のような年齢で前にも少し触れたことがあります。
今までは身の上話は語らなかったし、聞こうともしませんでしたが、話の節々から大凡の予想はしていました。
お父さんは大手の新聞社に勤めていましたが、ある時に会社の金策に苦慮している友人の保証人になったのです。それも普通の金融機関ではなく闇金融だったらしいんです。結局、友人の会社は破産したそうです。
根っからが真面目一方で、責任感の強いお父さんは何とかして自分で返さなくてはと悩んだと言います。一時は我が身を代償に生命保険で返済をと考えた事もあったようです。何しろ7,8千万の高額保証だったからです。
ふとした事で知り得た、ある弁護士さんとの出会いがありました。お父さんはそれなりの地位にあったため、高給取りで持ち家もありました。弁護士は金融業者に乗り込んで資産売却と退職金でケリをつけたんだそうです。半額以下だったと言うことです。彼がまだ学生時代の出来事です。
突然起こった想像もしない不幸のどん底に落とされました。無論、大学は中退、家庭も崩壊寸前になってしまったのです。
彼が弁護士になろうと強い志を持ったのは、この弁護士さんの出会いからです。途方に暮れて、命まで掛けようとした当時、救済の手を差し伸べていただいき、その対応ぶりが余程印象強く残ったのでしょう。
以来、彼は働きながら勉強に励んできたようです。しかし、当たり前に大学に進み専門的に学んできた優秀な人でさえ難しい狭き門、中退の彼が死にものぐるいで頑張っても残念ながら自ずと限界がありました。
必死で働いて蓄えた当座の資金と、燃やし続けた法曹への道。そこで、近年始まった「法科大学院制度」にチャレンジすることにしたんです。しかし、大学中退の彼の入試の権利を受け入れてくれる学校も限られました。その中から、最も希望する大学院を先月チャレンジしました。その合格発表が間近です。
どんなことがあっても合格してほしい。彼のような人材を落としてはいけない!
こういう人格を持ち備えた弁護士はそう希にはいない。必ず合格する!
近い将来弁護士になって、お父さんが救われたと同じように、本当に困った人に手を差し伸べてくれるだろう。
帰り際に彼が言った。彼は僕のことをお父さんと言う。「お父さん、困ったことがあっちゃいけないが、何かあったら連絡してください。顧問弁護士が付いてますよ」。冗談にもその意気で頑張って貰いたい。日本の為にも。