去年のちょうどこの時節、ご高齢ではいらっしゃるんだが、矍鑠として伺うからに知的なお婆ちゃんがお蕎麦を食べに来てくださった。
帰り際に自筆の横書きの書を下さった。
年齢を伺ってビックリ!なんと八十八歳だと言う。
いただいた書は、表装を施して牧之庵の客間に飾らせていただこうかと、馴染みの表具屋さんにお願いした。
しかし、待てど暮らせど出来上がって来ないのだ。余程多忙なんだろうなあ〜?そう思っていたが、ある時に同業者から、大病で入院している事を知らされた。
道理で幾ら待っても出来てこないって訳だ。
☆関連ブログ http://d.hatena.ne.jp/bokusian/20061012
このお婆ちゃんは東京にお住まいで「小野寺操」さんと仰る方で、雅号を「紫雲」と認めていらっしゃった。
御来店から数日後、お孫さんが祖母の名で検索したら僕のブログが目に入ったと言う。その時、コメントをいただいていた。
それから2ヶ月余り経ったある日、再びお孫さんからコメントをいただいた。
お婆ちゃんが脳梗塞で倒れ入院して、お孫さんの顔も認識できないほどになっている由、何しろご高齢の身、早く表装が出来てこないもんかと待ちつつも、事情が事情だけに催促も出来ずに今日まで来てしまっていた。
その後、お孫さんは何回か牧之庵にお越しいただいた様だが、お婆ちゃんは相変わらずの状態だったらしい。
そして今日、お孫さんがご夫婦で牧之庵に来てくださった。帰り際にババに、こっそりと告げたらしい。悲しいことにお亡くなりになってしまった事を。
8月に八十九歳の長寿を全うしてお亡くなりになった。一時は、快方に向かわれたらしく、もう一度、牧之庵にお連れできるかと思うほどになられた様だが、残念だった。
願わくは、ご病気が回復され、書の表装が出来上がって、御来店をお待ちしたかった。
殊の外、牧之庵をお気に入りいただいて、お孫さんにお話されていただいた様で、その縁でお孫さんも御来店いただいたのだ。
人の世の定めとは申せ、またお一人、牧之庵のご贔屓さんを、大切なお客さんを失ってしまった。
牧之庵のお陰で、普通であれば出会えない貴重なお客さん、悲しいかな、これで牧之庵のご贔屓さんを三人も亡くしてしまった。
出会えがあれば、お別れも定めか・・・・・・。
寂しい秋に、それぞれの思いを馳せる。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 合掌