☆8月13日のこと
毎年、早朝6時から共同作業と決まっている。
15日の祭礼神社に備えて、境内の草をきれいに刈り取ったり、おのぼり(幟旗)を立てる。
我が家では、朝一番に仏壇の掃除をして、盆提灯を飾り、お盆用の花を供える。
例年、この13日には、牧之庵の営業をお昼で終う。
ご先祖様のお墓参りで、夕食前に村の墓地まで迎えに行ってくる。
ババは、最後のお客さんの帰りを待って、後片付けを済ませ、明日の店で使う不足分の材料と、夕食に使う食材の買い出しに行くんだが、店が終えるのが3時を悠に回ってしまう。
その後に夕食の準備をしてだから、あっという間に、6時、7時になってしまう。
ジジは、盆灯籠に文字を書いたり、お墓参りの用具一式を準備して外に嫁いだ子供や孫の来るのを待つ。
みんな揃って出掛けられる頃には、7時近くになっていた。
孫達に盆提灯を持たせるのだが、ロウソクに火を入れると、悪ふざけで危ないから消したままで行くことにした。
墓地は、集落の外れにあり、徒歩でゆっくり歩いても10分足らず、途中に「火伏地蔵」がある。
先ずはここでお参り。村が小さいから、全戸の墓地にお参りする。
墓地の他にも、観音堂、六地蔵にお線香をあげ、最後に近くのお稲荷さん、庚申塔、十三夜塔にもお参りをして帰ってくる。
帰宅後、真っ先に仏壇に明かりを灯し、ご先祖様をお連れする。仏壇の前に、みんなが集まって夕食となる。
牧之庵が客間として使用している茶の間である。
これで牧之庵が、何故13日の夜にお休みいただく訳が、お解りいただけると思う。
ご先祖様をお迎えする為と、現住農家ゆえに、仏壇が茶の間(客間)にあるからです。
勿論、一般農家ですから、親戚の方が仏様参りに来てくれます。
こんな商売を始めてからは、営業時間を避けて来てくれるんです。
仏間を覗けば、一般家庭そのまま、お供え物、貰い物に至るまで全く変わりありません。
☆8月14日のこと
連日の茹だる様な猛暑、熱帯夜、汗も流れ落ちてしょっぱくない。
毎年、14〜15日が牧之庵ではお客さんの入りがピークなのだ。
覚悟を決めて準備するんだが、打つそばの量は、手打ちには限度がある。
いくら打っても、お客さんの収容能力、厨房設備の能力、時間の制約等で決まってくる。
困ったことに、常連のお客さんは、毎年の牧之庵のパターンを見越して、早い時間、遅い時間に集中していて、正午の時間帯を外して来られるが、去年あたりから逆現象が起こってきた様だ。
特に、遅い時間帯(閉店時間2時)の30分当たりに、ドカドカと来られる。
この日も、その現象から、可成りのお客さんが入れずにお帰りになった。
「この時期は、何処に行っても込んでいますから、待ってます」と、おっしゃる待ちのお客さんが数組いると、営業時間内に来られたので、お断りもできないし困ってしまうんです。
結局、お昼の終了時間が遅くなって、4時近くになる。
夜の営業時間は5時からだから、1時間足らずの準備時間しかなくなり、遅い昼飯を急いで掻っ込んで、そばを打つ。そばつゆも底を突いたり、添え物の小物もなくなってくる。
ババも材料がなくなって昼食は、食うか食わずに買い出しに行く有様だ。
今日は「ぶっかけデー」、最初のお客さんが「ぶっかけ」を頼むと、次からのお客さんも、人の食べるのを見て同じ物を頼む確率が多い。
人の心理って面白いもんだね。