鮭と言えば「大晦日」、塩引き鮭を食べて「歳を取る」。大晦日のことを「歳取り」という。
どこの家庭でも、この時ばかりは鮭を1尾、2尾と買ってきて荒縄で縛って吊してある。
大掃除を済ませ、神棚に正月用のお飾りをして、早めの夕飯である。
母親が朝からご馳走を作り、囲炉裏には家族の人数分の鮭が焼かれている。乳飲み子から寝たきりの老人、病人の区別なく、大切身の鮭が用意される。
必ず箸を付けて歳を取る。残った物は、後日楽しみにしていただくのだ。
一のヒレ付きは「おおべっさま(恵比寿様)」にお供えする。
翌日の元旦はお雑煮、ここにも鮭が使われる。頭や尾っぽなどは、最後に昆布巻にして使い、捨てるところがない。
最近の様に甘塩ではなかったから、冷蔵庫のなかった当時はぶら下げて保存した。
鮭と言えば「村上」。 牧之庵の囲炉裏の火棚に吊り下げられた鮭も村上産。「鮭の酒びたし」 用にと、お店改築の棟梁からの頂き物だ。もう完璧に干涸らびてしまって、飾り物。
江戸時代から鮭の回帰習性を利用し増殖していたって言うから驚きだ。
「鮭の酒びたし」文字通り、日本酒にひたしていただく。そのまま裂いて食しても結構いける。寒風で熟成された旨味は、噛めば噛むほどに程良い辛さと、何とも言えない特有のエキスが出て日本酒には特に相性がいい。
半年間も塩をすり込んだ新鮮な鮭を、日本海の寒風でさらして乾しあげたもの。酒の肴には最高だ。
村上市の「鮭の酒びたし」。腹は真ん中を少し残して、全部は裂いていないのが伺える。村上藩に恵みをもたらしてくれる鮭に「切腹させるような事はまかにならぬ」と、一部を残していた。現在でも、その手法は伝承されているそうだ。