「ああ〜良い香りだ!」暫く前に神奈川の親戚から花梨が送られてきた。
ズングリと太って、何とも言えない良い香り!ババが蔓籠に入れて玄関に置いた。
暫くして、今度は段ボール箱いっぱいの「柚子」が届いた。
牧之庵では、温かいうどんに柚子の皮を気削いで、ほんの少し入れて、ほのかの香りを楽しんで貰っている。
それにしろ、余りにいっぱいの量なので彼方此方お裾分けして、籠に入れて店頭に置いた。
欲しいお客様に持ち帰りいただいたが、あっという間に無くなった。それも一日ですっかり消えた。
牧之庵には、2本の花梨の木が植えてあるが、今年は殆ど実を付けない。
柚子は、この雪国の自然状態では実を見ることがない。関東のお客さんでさえ、未だ市場に出回らないと、喜んでお持ち帰りいただいた。
「済みません。お一人1個ずつにしていただけませんか」、団体のお客さん、お一人で鷲づかみ、お手伝いのおばさんに制されている。
聞いていたのか、最後のお客さんは「あら!柚子が何でもなくなっちゃった!欲張りね!」、聞きつけてババが、自家用に取っておいた物を差し上げた。
お客様商売だから、いろんなお客さんがいらしゃる。
牧之庵では、持って帰っていただいたり、食べていただくためにお出しして居るんだから、特別に斟酌はないんだが、かえってお客様の方でよく見ておられるようだ。
テーブルにクルミを割って置いてある。
遠慮してか、まったく手を付けずにお帰りになるグループのお客さんもおられれば、殻を山盛りにして、一鉢平らげていかれるお客さんもいらしゃる。
ここでまた、お手伝いのおばさんが厨房に来てぼやく、「見て!〇〇番のお客さん、一鉢空にしちゃったよ!隣のお客さんが呆れていたよ。それにね、勝手に自分でポットを席まで持てて、そば茶も空っぽだよ!」、まあまあ、お客様商売なんだからと、ババに宥められて、渋々クルミの殻を片付け、空になったそば茶を沸かす。
それにしても、クルミの人気が良いようだ。親爺は、せっせと、無くなったクルミの補充の用意。
水に浸けて、炒り鍋で炒って、二つ割り・・・・・・・・。
待てよ、この調子で無くなると、もう何ヶ月も持たないな?例年よりは、少し少ない在庫のクルミ、延命対策に平日の供給を見合わせることになった。
置けば置いたで小トラブル、次のお客さんが空の容器に拍子抜け・・・・・。
イヤハヤ、いろいろあるもんだ。
善意のつもりのちょっとした心遣い、無くなったらそれまででいいんじゃない?
では、済まされぬ、言って言われぬ微妙な雰囲気、思いもよらぬサジ加減。
無くなったらごめんなさい。皆さん運が悪かった、ってことで御容赦を。