4、5年前に山から採ってきたあけび蔓が作業所に放置されている。
牧之庵を開業して仕事にも慣れ、暇の時間を利用する余裕もできるようになった一時期、熱しやすく冷めやすいオヤジの性格で、無我夢中で製作した時期があった。
その数は、数百個。作っては、友人や近所の人に半強制的に差し上げたが、迷惑だった人も大勢いたのでは。
秋も深まり、蔓の水あげも休止して、葉っぱがすべて落ち切り、初雪がそろっと降ろうとする時期に早朝から雨合羽を着ながら山に行き、藪に入ってツルを採ってきた。
そんなことが2年ほど続いただろうね。
ある年は、右手人差し指の傷からバイ菌が入って、爪の裏が化膿してしまった。
傷負けはしない方なので、少しくらいの怪我では医者には掛からない。
家に常備してある消毒液と、傷薬で処置していたが、指先が腫れ上がり熱を持ってきた。
どうにも我慢ができなくなって、近くの病院で診てもらったんだ。
「よくここまで放っておいたね。痛かっただろう?指が腐る寸前だったよ」
早速、生爪を剥ぎ取って、付け根の部分を丁寧に切開して、膿を出し洗浄して貰った。
当然そば打ちはお休みとなり、暫くの間、臨時休業をいただいたんだね。生え出た爪は、ちょっと奇形で、未だに元には戻らない。
それ程嵌ったある時期、そのツルが処分もできずに作業所で邪魔になっている。
ちょっと前のブログでご紹介したが、半信半疑に水に浸して使ってみたら、結構柔らかくなって、作る物によっては十分使えることは分かったんだ(写真上)。
お盆が終わり、閑散としている牧之庵、そんならばと始めたら悪戯に火がついた。
歳月が経った分、しなやかさと、表皮の色ツヤはおちるので、何回も同じ細工はできないが、大まかなものなら十分作れそうだ。
手間暇掛けて用意したツルだから、処分するには忍びがたい、幾らかでも使うことで、蔓たちには御勘弁を乞う。
作ってどうするのかって?
そんなこと分からない。また犠牲者が出るんだろうね。
手間は十分掛かるんだね。編み上がったら、良く干しあげて柿渋を塗って仕上げる。まあ、何処まで続くかは疑問だがね。
雑用は、次々に山積みだから。
骨になるやや太目のツルは、完成後の形を想定しながら細い鉄線で軽く固定し、編み上がってから切断して取り除く。
これは円形状に無造作に編み上げる編み玉、電球を入れて間接照明に、様々にレイアウトして室内外の装飾に、中途半端な乾燥は、虫が付きやすいので、付いたら熱湯で煮沸したり、真夏の太陽で直干し。管理良ければ何年でも保つ。
(写真は、まだ製作途中の未完成品、編み目が細かくなっていく分、これからが作業に手間が掛かる)