雪消えの遅れた分、畑の作物も大分遅れてきた。
営業時間の合間を割いて、他の雑用と一緒に少しでも遅れを取り戻そうと慌ただしく動き回ってきた。
野菜や花卉類は栽培適期があるから、雪が消えると同時に、畑仕事も一時期に集中して忙しいんだよ。
市販の苗で育てるのは、ナス、キュウリ、トマトなどで、花類も含めて他は自分で種を蒔いて苗から育てるんだ。
夕顔、ゴーヤ、オクラ、花オクラ、青シソ、南蛮(タカノツメ)など、花はアスター、スターチス、紅花、ツリガネソウ、ペチュニアなど数種類。
葉物はツルナ、葉大根、春菊。
春先の畑には一部に秋蒔きのホーレンソウ、三月菜(菜の花)が越冬していて、雪消えと共に成長したものを、春一番に利用するんだよ。
雪国では、最初に採れる貴重な葉野菜で、それらを使い切ってから、畑を耕して春播き作物を栽培するんだ。
他に、ニラや、ツルナなどは、数年間は畑に植えっぱなしで利用して、状態を見て植え替えするんだよ。
そば屋で重宝しているアサツキは二回に分けて栽培している。
自分等の使い勝手で分けているんだけどね。証すと、ホント、使い勝手なんだ。
牧之庵では、アサツキのネギの部分を「薬味ネギ」として利用してるんだね。
何でか?っていうとね、此奴は、もの凄く使い勝手がいいんよ。
だってそうでしょう、アサツキって言うと、俗に球根の玉物を利用するんでしょう。
ある時、野生化されたアサツキが、年間2回に分けて葉っぱの成長があることを知ったんだ!
もちろん、そば屋になってからのことなんだけどさ。
雪消えと共に、真っ先にネギ部分が成長して、柔らかな薬味になるんだね。
そして、6月いっぱいまで使い切ると、自然に枯れちゃうんだよ。球根はしっかり大きく育っているから、ネギが枯れても根っこの球根は使えるんだ。
夏場は枯れちゃって端境期になっちゃうけど、お盆が過ぎて秋風が吹く頃になると、再び新芽が伸びてきて、中秋から雪降り前までの時期には、再び薬味として利用できるほどに成長するんだ。
だから、植えてある半分は根こそぎ取らないで、上部のネギだけ切って球根は残し、残り半分は球根を使う(種物としても)ので根をつけて引き抜くんだ。
秋に選りすぐった球根を植え込むんだね。
そんなこんなで、牧之庵の畑は概ねふさがって賑やかになってきたよ。
後は、お天道様のさじ加減、極端な異常気象はご免だよ。