牧之庵の庭先では、アスターなどの夏花がすっかり終えて花物の端境期、ケイトウなどが秋の主役である菊の開花まで、暫く中継ぎを任されている。
畑で栽培している切り花が途切れてしまい、やむなくババは自家で栽培している菊の登場までは知恵を絞る。
花屋さんや一般農家が出品する朝市などの材料が主体となり、そこに数少ない山野草が希に加わる。
裏の畑で「吾亦紅(ワレモコウ)」が程よくボンボンを膨らませ、ババは適期を見極めて玄関先にと狙っている。
切り花ではないが、秋の山野草と言えば「鷺草(サギソウ)」も代表格だが、牧之庵の玄関先に置かれた鉢の中で一本だけ先走りの花が咲いた。
この類いは、なかなか手間の掛かる山野草で、毎年植え替えをしなくては退化してしまう。
こいつに限らず、特殊の花物の山野草は、概して植え替えが基本となるので、雑用の多い蕎麦屋の親爺では管理が行き届かない。
実を言うと此奴も親戚の人からの頂き物で綺麗に植え替えてある。
前にも別の物を頂いてあるんだが、一年放置しただけで翌年の発芽は半分以下になった。
「鷺草(サギソウ)」とは、実の良い名前を付けたもんだ。その名の通り真っ白なサギが大きく翼を広げて舞っている様、綺麗な花だ。