牧之庵の金曜日は、どういう訳か夏冬を問わず暇、案の定、今日も例を引く。
数組のお客さんの中に、頑なに塩沢の織物の伝統を守り抜く織物工場「中田屋織物(中島清志社長)」が、お客さんをお連れしていらしゃった。
例年、雪が降り止んだ春先、凍み渡り(春先に雪上が凍り、人が歩いても抜かり込まないで歩かれる状態を言う。
雪が降り止んで、雨が降り、雪表面が凍結する状態)が出来る頃、雪面に麻の越後上布を広げて「さらす」伝統工芸「雪さらし」が始まる。
「雪さらし」とは、雪という自然条件を利用して、「越後上布」と呼ばれる上質な麻織物を雪上に広げて「さらす」事によって、殺菌、漂白することを言うんだそうです。
雪さらしが、何時の頃から始まったのかは定かでありませんが、「越後上布」なる麻織物は、千数百年の伝統があるそうです。
この地方では、奈良時代に麻織りが存在し、奈良の正倉院に保存されているそうです。
このことから、塩沢の織物の歴史が、如何に長いかが分かります。
古い越後上布の伝統技術から生まれたものが「塩沢お召」と名声を極めた、今で言う「本塩沢」です。
塩沢お召「本塩沢」
今日、牧之庵にお越しの、中田屋織物の社長(中島清志)は、塩沢織物の伝統工芸士です。
例年だと、「雪さらし」は、2週間も後の時期(3月中旬)に行われるのが普通ですが、今年は未曾有の少雪で、平地では雪が全くありません。やむなく、半月も早く行われました。
明日(3月3日)に、越後上布「雪さらし体験」が、雪のある山中で行われるそうです。
例年、体験ツアーが行われ、一般体験者を募って行われてきました。
中田屋織物(中島清志社長)
15歳の時から始めて半世紀、塩沢織物の伝統工芸士(中島清志社長)
上布とは、特上の麻織物の総称で、越後で生産される麻縮は「越後上布」と呼ばれていた。
原料となる麻を気の遠くなるほどの手作業の工程を経て、特殊の地機(じばた)という織り具で、二ヶ月以上も掛けて織りあがる。
今や、織る人も少なくなった中、中田屋織物のお嬢さんも受け継ぎ、伝統を引き継ぐ。
実は、牧之庵は中田屋織物とは親戚であり、先代の縁を引く。
後日、もう少し詳細をご紹介したい。