この辺雪国の特徴的な光景として目に入るものがある。殆どといっていい程に、各戸が家の周りに池を設けている。
これは、単に鯉や魚を飼う目的だけに備えてあるものではないんです。
鯉を飼っている農家もありますが、その大半は消雪に利用しているんです。
この時期になると、「たなかえ」といって、1年中に溜まった土砂を撤去して、消雪用に備えます。
屋根に積もった雪を「雪掘り」といって、下に降ろします。
家1軒分もの雪を一時期に下に落とすから、下は相当の雪の量になってしまうんです。
落とした雪は池の中に落ちて自然流水で消す仕組みです。
「池」のことを、この辺では「たな」とか「たなんぼ」と言います。
沈殿した土砂を撤去することを「たなかえ」と言っています。
近年は、水中ポンプなる便利なものがありますが、その昔(僕が幼少の頃は)は、バケツで池の水を汲み出していました。
世は変わって、文明の歴、屋根からは自然落下で雪が落ちてきたり、屋根融雪で屋根の上で消してしまいます。
落ちた雪は、家の周囲に配管した管から水が出るようになりましたが、これとて手を掛けずに自然に消えるものでもないんです。
連続的に降る雪は、必ず人力で精魂込めて処理しなくては、雪は消えません。
なんと言っても、池が重要な消雪施設になるんです。
屋根融雪で降りしきる雪を屋根の上で消す設備(これとて、電気や灯油の熱源を使い、経費がかかります)は別にして、大概は自然落下か人力除雪で処理をしています。
ここで、池が重要な働きをしてくれます。かといって、何処でも流水がある訳もなし、水のない地域は苦労するんです。
今日の定休日、その「たなかえ」をしました。
しかし、牧之庵開業以来、忙しさにかまけて、一度も「たなかえ」をしませんでした。
案の定、40㎝以上の土砂の堆積がありました。
お陰で今日はバテバテ、牧之庵は自然落下で、下に落ちた雪を回りに設けた池に落ちて消す仕組みになっています。
そんなこんなで、5年間もサボったバチが今日に集中、イヤハヤ、疲れました。
1箇所の池を処理しただけで終わりました。
ちなみに牧之庵は6箇所の池があるんですが、今日処理した池が最下流、最も土砂の堆積した池なのです。
こんなに奇麗になりました
雪国は、想像に絶する余計な仕事が山ほどあります。肉体的にも相当の苦労を伴います。
雪降り前の雪囲い(植木や建物の防護)とその撤去、シーズン中のアクセスの確保(道路融雪、除雪など)、建物の除雪と降ろした雪の処理、それに今日僕がしたような「たなかえ」などの間接作業、雑用は数えきれません。
例年の繰り返し、今年もまた例外はなく繰り返される。
されどその苦労が、やがて迎える春の訪れと共にすっかり忘れ、何十倍の喜びの春を、待ちわびた春を満喫する。
「苦あれば楽あり」、これまた人生、これまた定め、人生まれいずる地に安住を知る。
我が故郷が最高の所以なりか。