昨日の閉店後、3時頃に電話が鳴った。
阿賀野市(旧、北蒲原郡安田町)の籏野釜(庵地焼)の窯元の方が近くに用事に来たので来訪するという連絡だ。
牧之庵のそば用具は庵地焼を使っていることは、以前(5月7日)のブログでご紹介させていただいた。
暫くして、総勢6名でお越しになられた。
籏野窯は麗子(長女)・聖子(三女)・佳子(四女)さんの三姉妹で焼き物をされておられるが、今日お越しは、麗子、佳子さんのお二人と、京都で本格的にその道の修行を積んでこられたという佳子さんのお嬢さんと男性の三名(仕事関係のお友達か?)。
男性の方は県内大手ゼネコンの営業部長、同会社のOBの方、古材で茶室を造られたという腕利きの大工さん。
牧之庵の囲炉裏を囲んでの四方山話、庵地焼の話、茶室の話、庵地焼を注文しているが未だ出来てこない話、裏話など等々。
折角お越しいただいたので牧之庵のそばを食べていただいた。
夜の開店時間(5時)間際まで、いろんな話をされてお帰りになられた。
籏野窯の「庵地焼」は、明治11年に曾祖父が開窯して、お父さんの義夫さんが「庵地焼」と改称したそうだ。
長女の麗子さんで4代目で現在は、三姉妹で窯を守っている。
焼き物の特徴は、以前のブログで紹介済みなので、詳細は省略するが、なんと言っても黒を基調とした茶とのコントラスト、艶やかで筆舌できない光沢と使い込むほどに味が出てくる不思議な焼き物。
「毎日使う物だから、使い勝手のいい物でないとね」と言うだけあって、形はシンプルで使いやすくて飽きが来ないし、使い込むほど味わいが出てくる。
一つ一つが完全手作業、足で蹴って回す「蹴ろくろ」は有名だ。
手間が掛かって、有名になって益々多忙の中で、牧之庵が3回に分けて注文した物は何時になるのやら?
「せめて1回分だけ、ちょっと急いで欲しいんだが?」
今日の来訪にさり気なく釘を刺したつもりだが?時に間に合っているので、楽しみに待っているのも良いもんだ。
芥川賞作家・津村節子さんにより、籏野窯を舞台にした小説「土恋(つちこい)」が数年前に発売された。
夫は著名作家の吉村昭さん。
「土恋」は、戦後のシベリア抑留後の籏野窯三代目、父故義夫さんから三姉妹が窯を継ぐまでの変遷を描いている。
筑摩書房「土恋」津村節子著書
佳子さんの娘さんも京都で絵付けの勉強もなされたそうだ。
やがて、「庵地焼」の基調は継承しつつ、新しい作風が生まれて来るだろう。
これまた、行く先の期待と楽しみが増えた。
牧之庵の庵地焼