9日には、僕の中学校の同期会が隣町越後湯沢の温泉宿で催された。そう、還暦の記念同期会なのだ。
ババは高校の同級会のため、9時に家を出た。数ヶ月前に、ババの案内状が早くに届き、出席の返信を投函した。
その数ヶ月後に、僕の案内状が届いた。見るとババの同級会と同じ日なのだ。
ババには見せずに内緒で隠しておいた。ババが遠慮して辞退する可能性が高いからだ。
ババも久しぶりの同級会、みんなと会えるのを楽しみにしていたのだった。
僕の勝手で始めたこの商売、思えば随分と出不足が続いて愚痴こそ零さないが寂しい思いをさせているんだろう。
二人で出席して牧之庵を臨時休業と言うわけにはいかない。
今の牧之庵は、どちらかが居なければ営業不可能なのだ。
返信はがきの投函期日が迫ったある夜、同級生がそばを食べに来てくれた。「トミさんは同期会はどうした?」実は、出席の予定がないので忘れていた!「ああ、実は俺、カカが同じ日に同級会があって、早くに案内状が来たからカカが出ることになっているんだ。
牧之庵を臨時休業にするわけにはいかないし、出たいけど今回は諦めるよ」
即日、ババには内緒で欠席の返信を投函した。
同期会が近づいたある日、幹事から電話が入った。
9日(土)が一泊の同期会、翌日(10日)は、参加者を募り、亡くなった同期生の弔いを隣村のお寺(この寺の僧侶も同期生)でするんだそうだ。
その後に、牧之庵にそばを食べにくるという。
人数は未定だが、みんなの参加を募ってから連絡を貰う手筈になっていた。
ここで始めてババに打ち明けた。「実は、俺も同級会が9日にあるんだよ。お母さんの方が早かったから、俺は欠席にしてはがきを投函してあったんだ。終わるまで内緒にしていたかったんだが、実はこれこれで、同級生が押し寄せるらしい」と、ババはビックリして「そんな大事な時期の同期会なのに、私が欠席の連絡をするから、おとうさんが出なさいよ!普通の同級会とは訳が違うんだから!」そう言われると思って今まで内緒に伏せていた。
そして、頑として譲らない「いや!俺はこの後、高校の同級会と幹事でもう一つの同級会をすることになっているんだ。
その時に出してもらうよ」何とか説得した。
実はババは、次回の代表幹事になっていて、今回は大切な同級会だったんだ。
一件落着、9日の夕方、幹事から連絡が入った。
明日は、最高でも20人程度の希望者だから、その様に段取って欲しい由。
さて10日当日に最終連絡が入った「三十数人になった。11時前には行けるんでその様に頼む」、何だって、簡単に言ってくれるよ!貸し切り状態じゃないか。
何人かは相乗りで来たが、牧之庵で解散なので車の数だけはいっぱい、忽ち駐車場は満車、通りの車道に何台も駐まってしまった。
近所の人が、何かあったんじゃないか(不幸でも)と心配したという。
それでも良かった。いや、ほんとに有り難い。少しの時間だったが、それでも久しい中学校の同期生の一部の友と出会えた。
一般のお客さんは、車の数にビックリしてサラさっぱりだったが、些か、ご迷惑をお掛けしたかもしれない。
還暦のハプニングと御容赦賜りたい。