先日の定休日のこと。
年若い誠実そうなお嬢さんが背にリョックを背負って、手には袋をぶら下げてセールスに回って来たんよ。
なんでも、桑の葉で作ったお茶の無料試飲キャンペーンで回っているらしいんだね。
「お父さんは、お茶をよくお飲みになりますか?」、「ああ、よく飲むよ。抹茶にそば茶、それにおちゃけもね」。
なんでも、桑の葉で作ったお茶は、何々が何々の何倍もあって?血液をサラサラにするとか、どうたらこうたら?
飲んでみてくださいと、紙パックを1個取り出したんよ。
「ああそうかね。でもまあいいやね、こんな恰好だから家に入るんがめんどくさい。それに、毎日そば食べてるから、体は頗る健康なんだよ。あんた、そば屋に来たって駄目だよ。ルチン、ルチンでみんな健康なんだからさ」。
人の良さそうな年若いお嬢さん、ああそうなんですかと、無理押しもせずに納得しちゃったみたい?
内心「駄目だわい、これじゃ」と、おもいつつ・・・・・・・・
「それに、もう一つあるんですよ」と、言って、手にぶら下げた袋から徐に変なもんを取り出したんよ。
「これはね、アメリカのどこそこで発明された特殊素材でできているもんなんですよ。アメリカで買えば幾いくらするんですが、幾いくらでお売りしてます」だってさ。
見れば家の末娘より何歳か年下の娘さん、桑茶でチャチャ入れちゃったから、「お茶には興味ないんだが、その風鈴みたいんの一個貰おうか。店の中に掛けとけば、お客さんが喜んでくださるから」。
律儀な娘さん、「領収書なんかいらないよ」って言ったんだけど、「そう言うわけにはいかないんです。決まりになっていますから」って、置いていったんよ。
早速、今まで掛けていた風鈴を移動して、そこに掛けたんだ。それにしろ、いい音色なんだね。
ガラス製品でもなさそうだし?一体なんだろうね〜?
「これなんに見えますか?」と娘さん、「金魚だろう?」、「そう金魚なんですね。よく分かりましたね。皆さん、フグだっておっしゃる方が多いんですよ」だってさ。
でも、下が重すぎて風受けが悪いから、少しくらいの風では動かないんだね。
「これ手で動かす風鈴かね?」、相変わらずの減らず口だが、娘さんは喜んでお隣さんに回っていったよ。
まてよ?彼女はこれが風鈴だなんて一言も言ってないんだよな?でも、風鈴なんだろうね?鳴り呼かい?そんなバカな。
やっぱ風鈴じゃ。
上下にフグならぬ滑稽な金魚 特殊素材とは、中間にぶら下がった4本の細い棒のことらしい?中にある球状のガラス玉らしき物に触れると、高い共鳴音みたいな?透き通った音が出るんだね。