お盆休みの後半、茹で釜のバーナーの調子がおかしくなった?火口にカーボンが溜まって、ノズルが狭くなりガスの出が悪くなったのだ。
火元を覗くと不完全燃焼で真っ赤に焼けたバーナーが2個ほど確認された。「ボボボ、ボボボ」とエアーだけが吹き出る音。
なんとか我慢して明日の定休日に掃除するつもりで居た。
実は、この茹で機は中古品なんだね。旧式でバーナー部分にカーボンが付着し易いんだよ。
開業に当たって、村の大先輩が、茹で釜をお祝いとしてくれたんだね。方々探し回って、大きな銅釜を探し求めた。
ところが、茹で釜に合わせて、ちょうど良い茹で機が見つからなかった。
そりゃそうよ、何たって骨董品、なんでも、どこそこの学校でお湯を沸かしていた物らしいんだね。
当時は、かまど焚きだろうから、ガスバーナーを備えた茹で機なんかあるわけないよ。
いや〜、あっちこっちと探しまくったね〜、最後は新潟市のリサイクルショップで丁度良いサイズを見つけたんだ。
それも開店10日くらい前だったと思うよ。釜穴も釜底からバーナーまでの間隔もピッタリ、ちょっと旧式すぎたけどね。
さて、茹で機は調達できたから使ってみるか?ところが、その銅釜、やばいよ!水漏れがするんだね。慌てて修理したね。
幸いにも、友人に器用な奴が居てね。直ぐにハンダ付けで直してくれたんだ。
以来、6年も経つが、水漏れは一度もなかったし、ポタンとも垂れないね。
柄杓も対で貰ったんだが、これも年季の入った銅製の大きなやつで、2丁セットでね。
開業以来、使い続けて7年目に入ったが、難点はバーナーの調節が難しいんだね。
もう古いから仕方がないんだが、前述の如く、カーボンがノズルに詰まっちゃうんだよ。
それに、銅壺(どんこ:茹で釜の外部に設けられた別個に湯を沸かす場所)が付いていない旧型の茹で機だから、茹で釜の湯の補給ができないんだね。
仕方ないから、びっくり水や、補給湯はボイラーからの蛇口で賄ってるんよ。
裏話も大変だね。まあ、いろんな事があるもんだよ。でもね、僕は頗る気に入ってるんだ。
大先輩のご好意、お陰で今があるんだよ。悲しいかな、2年ほど前にあの世に行って、今は遺品になっちゃった。
だから、余計感慨深いものがあるんだね。僕が蕎麦屋を止めるまで大切に使わせて貰うつもりだ。
「初心に返って」