村の鍛冶屋さん
この辺に一軒だけ希少価値として残っていた「村の鍛冶屋さん」が亡くなられて暫くになる。
最近、その鍛冶場あたりから「トンチンカン、トンチンカン」と、鉄材を叩く音が聞こえてくるんだ。
なんだろう?まさか、鍛冶場で仕事をする人など、居る筈もなし?
営業を終えて家外にでたら、またまた聞こえてくる?気になるので音に誘われ遠くから覗いてみたんだね。
すると、倅さんが何やら作業中の様だ。僕を見つけて、お出で、お出での手招き。
「おい、何してるがだ?鍛冶屋を始めたがか?」
そうなんだ、鍛冶屋まがいの作業をしてる。なんと!「ぬか釜」を作ってる。
「ホ〜!たまげたな、やっぱ蛙の子は蛙、門前の小僧習わぬ経を読むだな」思わず叫んだ。
それももう、幾つも作ってあったんよ。
この「ぬか釜」ってのはね、昔は何処の家でも使っていた、ご飯を炊く時の釜なんだよ。
薄い鉄板を丸くして、タガネで空気穴を無数に明けてあるんだが、中にもう一回り小さな、同じような物を入れてあるんだよ。
その空間に燃料として使う籾殻(籾を剥いて玄米にするんだけど、その時出る殻のこと)を入れて燃やすんだ。
上にご飯を炊く釜をのせるんだね。こいつで炊きあげたご飯は、そりゃ〜美味しくたけるんだよ。
適当なお焦げが出来るし、何たって香りがたまらないよ。
近年は、一般家庭では使われてはいないけど、演出として旅館や、イベント用でブームを呼んでるみたいだね。
早速、僕も製作をお願いしてきたんだね。そのうちに、牧之庵の何処かにお目見えするかもね?
序でに、鍛冶場をデジカメに収めたんだ。懐かしい、貴重なカットだよ。
倅さんが、休日を利用して「ぬか釜」作り こんなにいっぱい作ったよ!