この歳まで生きるけど、あんなに雪が少なくて一気に春が来て、残雪が全くない中で咲く桜なんか初めてのことだね。冬に入り込んで春がいるって感じ。ものすごい早さで春が来た。
今までに経験したことのない短い冬、訪れた早い春、これまでに体が覚えてきた季節感とは全く違う感覚にいささか戸惑っているよ。
屋敷の中の雑草が暖かさに誘われて大きく育つ。
イヤ〜、参っちゃうよ! こんなに早く春が来たって、二毛作ができるわけもなし、特別変わった野菜を早々と栽培もできないし、ただ雑草処理に追い回されるだけなんだ。
そう、余計な仕事を早々とさせられるだけよ。
そんでもね、人間ってやつはおかしなもんで、ポカポカ天気の中にいると、季節感を間違ってしまうんだね。
3日前の水曜日(牧之庵の定休日)の出来事。「まてよ?ほっけにあったけすけ、山菜が出たっぺかな?」そんな思いに誘われて、イッポンワラビ(地元ではアブラコゴメという)を求めて、40キロ離れた信州まで茶前(朝食前)4時半頃起きて行ってきたんだが、まったく駄目だった。
やっぱね、雪がいっくらはやけいたすけたって(訳:雪がいくら早く消えたからといって)、そっけの訳にはいかんかったない。
そこが自然の摂理、生物の生態、ある程度の決まり事があって、地温が温まらなくては(積算温度)駄目らしいね。
そんでも、桜の開花時期が毎年、少しずつ差がある様に、さすがこれほど雪がないと山菜時期も相当早いようだね。
昨日、営業を終えてから近くの山にいってきたんだが、先走りのイッポンワラビ(コゴミ、コゴメ)と、出始めのコシアブラ、タラの芽を少々ゲット、もう一週間早いかな〜?
お昼に、埼玉の常連さんが来られた。なんとコシアブラ、タラの芽を一掴みを採ってきたんだよ。リゾートマンションのお客さんなんだけど、昨夜に来られて、今朝採って来たんだね。
びっくりだね、もう数十年も来てるから地元民より知ってるよ! 「おいオヤジ、コシアブラとタラの芽を採ってきたから天麩羅にしてくれよ。これは、今日と明日の分だからね」だってさ。
これだけでは、ちょっぴり寂しいから自宅で作る「行者ニンニク」と、「ユキザサ(雪笹)」を加えて天麩羅にした。
大きめの皿にたっぷりの山菜の天麩羅、旨そうにペロリと平らげた。どうやら、明日も食べるようなんだ。
ユキザサ(雪笹)
行者ニンニク
「春はやし、山菜はやし、口はやし」......おそまつ。