牧之庵では、開業当初から蕎麦汁に昆布を使っている。
当初は、出汁を取った昆布は全部捨てていたが、なんとか再利用する方法はないかと、あれこれと試行錯誤で試作を繰り返したんだ。
最初は、ババが大豆などと一緒に定番煮物風にして、お通しなどに使っていたんだが、どうも足が速くて保存がイマイチ、それでなくとも昆布は長期保存には難があり、お蕎麦屋さんでも出汁にはあまり使わないんだね。
ある程度の保存が効く方法?
そうか、それなら佃煮が良いんじゃないの?保存を効かせるには、そうか、酒、酢、山椒、唐辛子を味付けに加えれば、一石二鳥だ。
試行錯誤で出来上がったのが、適当な目分量、勘そのもので作る「牧之庵流の佃煮」なんだね。
☆まったく適当な昆布の佃煮の作り方
先ずは、主材料の昆布だが、出汁を取り終えた昆布と、ダシ取り前の乾燥昆布を最初から使う場合の二通りが考えられる。
ダシを取り終えた昆布を利用する場合は、昆布を4センチくらいの大きさで四角に切る(昆布を何枚も重ねて、包丁で切ると早い)。
ダシ取り前の昆布を使う場合には、水に充分浸してから、柔らかくふやけた物を鋏で切ると良い)。
問題は、双方とも昆布の柔らかさの加減がポイント。煮だした昆布は、爪を立てて容易に柔らかさ(爪が簡単にたたる)を確認できる程度が丁度良い硬さ。硬かったら再度、味を付ける前に煮直す。ダシ取り前の昆布も同様にして整える。
いったん、醤油などで味付けすると、幾ら煮ても硬くなるだけ。
双方とも、煮だした昆布の水を捨て、あらたに醤油、日本酒、味醂、一味(七味でもいい)唐辛子、白砂糖、山椒(実山椒はスリコギなどで潰してから、市販の粉山椒、時季には木の芽でもいい)を同時に加えて弱火で煮る。
個々の分量は適当(昆布何?に、調味料これほど、なんて事は計ったことないんで不明)、弱火からやや中火で、焦がさないように水分がなくなって、焦げる寸前まで煮込む。
水分がなくなってくると、砂糖が焦げ易いので、幾分水分が残っている程度で火を止める事。
醤油、砂糖の甘辛さと、唐辛子と山椒のピリ辛さ、味の円やかさと、保存効果に酒、酢を加えて整える。
味加減は、各々の嗜好、好みに合わせて何度か経験して、体得することが肝心。
冷ましてから、タッパ等に詰めて冷蔵保存、1ヶ月は悠に保存可能。
前に作った物がなくなる前に、新たに昆布が出たら、新しく作っている佃煮の八割方出来上がった段階で、食べ残りの佃煮を一緒に加えて煮直すと、新旧の味が混じり合って、一層美味しく、深まった味が出るし、面倒なく管理できる。